1973年に出された本の再発行版。 以下は個人的な感想。 しかしその内容は、現在でも十分通用する。 最近発行された本と言われても、文章も内容も違和感は無い。 それだけではなく、そこらへんの通俗書の4倍も中身がある名著である。 私自身も知らなかったことが多く、とても面白く読ませて頂いた。 この記事が「天文と気象」誌に連載されていた当時は、 アポロが月に行き、皆の目が、空に、宇宙に、向いていた時代である。 UFOさわぎ。彗星。月面の閃光現象。 ユーミンの「ジャコビニ彗星の日」に歌い込まれた 72年10月9日。 (72ねんじゅうがつここのか) 私も、まだ流星も惑星も知らない頃、テレビニュースを聞いた母親に言われて 夕方の空を見上げたことがある。あいにく曇りで何も見えなかったが。 あれが今にして思えば、「72年10月9日だったのか」と思い当たって感慨深い。 あれはこういう話だったのか、と。 一番星を探していた思い出もよみがえった。あざやかな金星。 遊んでいて日が暮れ一番星を探していると、 まだ夕陽を浴びている飛行機が、飛行機雲を短く伴いながら西の空に 飛んで行き、一度だけ太陽光を反射してだいだい色に光るのもきれいであった。 火星の記述は、バイキング探査機の前で終わっているが、それがかえって 当時の気運を感じさせてよい。HSTで取った火星の写真やパスファインダーが 送って来た映像などを見せてあげたい。 水星の内側を回る惑星バルカンの話もおもしろい。 天文の距離はパーセクで、なぜ光年でないか。 それは太陽までの距離が定まっていなかったからである。なるほど。 太陽までの距離を求めようとする試みも興味深い。 もしあなたがこの世界にひとりぽつんと取り残されたら、 それらの知恵を継承できるであろうか。 惜しむらくは、著者にもうちょっと長生きして頂いて、20世紀の後ろ1/4世紀 の天文学も語って頂きたかった。 しかしこの本で語られているよりのちの天文学の歴史は、読者自身が書いて いくものとしてわざと残してあるような気もする。