宇宙の科学2  12回目  2002.7.12.


1.活動銀河核

活動銀河核とは活動的な銀河の中心のことである。英語ではActive Galactic Nuclei で AGNと呼ばれる。活動銀河核には、 ジェットを吹き出す電波銀河の中心核、 点状で恒星の様に見えるクエーサーなどがある。

<電波銀河>
電波銀河3C31の電波ジェット
電波銀河NGC4261の中心部にあるダスト円盤とブラックホール
電波銀河 ケンタウルス座Aのジェット(CenAのスケール違うかも)
電波銀河 ケンタウルス座A中心部
乙女座銀河団の中心にある大楕円銀河 M87 からは10万光年以上のジェットが、 電波や可視光で観測されている。
ジェットの根本を電波干渉計で観測すると、ジェットの塊が動いているのが観 測される。その動きは4年間で25光年であった。1年間に6光年も動いているの である。光速の6倍のスピードである。このように光速を超える動きを 超光速運動(super luminal motion)という。これは見掛けの動きであると理解 されている。つまりジェットは真横に飛んでいるのではなく、ほとんど我々の 方向に向かって来ているのである。

<超光速運動>
t=0でジェットが出たとする。速度vで我々と角度θをなす方向に飛んでいるとする。 我々の方向がX軸とする。t=0に出た光の1年後の位置は(c×1年、0)である(cは光速)。 1年後ジェットの位置は (v×1年×cosθ、v×1年×sinθ)である。 我々は、t=0の光を見てから、t=1年の光を見るまで、(c×1年−v×1年×cosθ)/c、 の時間しかたたない。ジェットがこっちに進んで来ているからで ある。その間にジェットは横方向に v×1年×t sinθだけ動いている。したがっ て、横方向に動いている速度は、(v×1年×sinθ)/{(c×1年−v×1年×cosθ) /c}のように見える。 変形して=c×{(v×1年×sinθ)/(c×1年−v×1年×cosθ)}、
1年で約して=c×{(v×sinθ)/(c−v×cosθ)}
ここで例えばv=0.99c (光速の99%)、θ=6度とすると、(sin 6度=0.1なので便利。)
=c×6.4 つまり光速の6.4倍の動きを示すことになる。(授業では計算を間違えましたね。)
(グラフ)
ある速度vの時に、見掛けの横方向速度が最大になるのは、cosθ = v/c の角度θの時。
その時の横方向速度の最大値は、v / √(1 - (v/c)^2) である。

<クエーサー>
恒星と同じく点にしか見えないけれども非常に遠方にあって膨大なエネルギー を出している天体をクエーサーと言う。 この図で同じような明るさの星が2つあるが左側の方はクエーサーである。 右の恒星はたかだか90光年くらいの距離だが、このクエーサーは90億光年の彼方に ある。1億倍も遠いのである。したがってもともとの明るさは1億倍の1億倍=1京倍も 明るい。銀河系は2000億個の星があると言った。このクエーサーは銀河系全体の5万倍も明るいのである。 そばに微かに写っている楕円銀河と比較してほしい。
クエーサーは長らく「点」であったが、望遠鏡の進歩により最近ではクエーサー の回りに微かな銀河が写るようになった。銀河の種類はさまざまであるが、 衝突銀河も多い。
銀河の衝突・合体は、ときたまある現象であ る。銀河と銀河がぶつかると言っても、星同士は決してぶつからない。だが重 力を及ぼしあって弾き飛ばされ銀河の形を変える。ガスが圧縮され活発な星生 成を起こす。そして一部のガスは、銀河の中心にある巨大ブラックボールに落下する。 こうした 銀河衝突がトリガーとなってクエーサーが出来たという説もある。

2.ダークマター(暗黒物質)
光は出さないが、重力は及ぼすものをダークマターという。 銀河団では全質量の80%はダークマターが占めるが、その正体は不明である。

かみのけ座銀河団
1。銀河の速さを測ると銀河団中を結構速く動いている。強い重力があるからスピー ドが上がる分けだから、そこには強い重力を及ぼすものがあるはずである。 その質量は可視光で見えている銀河(星)の質量では足りない。その10倍程度あ る。光では見えていないものなのでダークマターという。

2。X線天文学が生まれ、銀河団がすっぽり高温のX線ガスに覆われている事が 判明した。温度は1億度程度で、非常に熱い。こんな熱いガスが宇宙空間に飛 び散らないで銀河団にたまっているのは、そこに強大な重力があるからである。 高温のX線ガスを引き留めておくには、可視光の銀河の質量やX線ガス自身の質量で は足らない。その5倍もの質量が必要である。ここでもダークマターの存在が 示唆される。

3。3Kマイクロ波背景放射で10万分の1の揺らぎが見つかった(前回)。ビッグバンから10 万年後の宇宙はこの程度むらむらだったのだ。この揺らぎの濃い所が集 まって銀河団になった、のであれば良かったのだが、この揺らぎから現在の銀河団 を作ることはできなかったのである。 揺らぎが小さすぎて銀河団にまで成長しないのだ。そこでダークマターが登場する。 10万年後の時点ですでにダークマターは10万分の1よりずっと大きい揺らぎを持って いた。その濃い所へガスが引き寄せられ銀河団を作ったとされる。 ダークマターは光とは相互作用しないので、マイクロ波のむらむらには関与し ないのである。宇宙の形成においても目に見えないダークマターが主導権を握っ ている。

4。重力レンズ
銀河団の向こうにたまたま銀河があったりすると、銀河団の重力で光が曲げら れ、レンズを通して見たように歪んだ像になる。 Abell 2218。 曲げられ方から銀河団の質量が分かるが、 ここでも見えている銀河の質量だけでは足りず、ダークマターが必要である。

3.宇宙の歴史・未来
宇宙の年表

10の-43乗秒 プランク時間。不確定性原理によりこれより前ではエネルギーの 揺らぎが大きく、宇宙があったのかなかったのかよく分からない。
10の-37乗秒 インフレーション始まる?。宇宙の大きさ10の-27乗cm。
10の-36乗秒 このころX粒子が存在し、粒子-反粒子の対象性が崩れた?。
10の-33乗秒 インフレーション終わる?。宇宙の大きさは本当なら10の-23乗cm だが、インフレーションのために1cm程度の大きさになった?。
10の-6乗秒 クオークが陽子と中性子になる。
3分間 ヘリウムが合成される(全質量の25%がヘリウムになった。)
10万年 自由に浮遊していた陽子と電子が合体し、水素原子になる。この時の 宇宙が3Kマイクロ波背景放射で見えている。
100万年 最初の星が生まれる。以降、恒星の時代。
6億年 最初の銀河が生まれる。

<現在>

100億年 太陽の寿命
100兆年 もっとも軽い星も燃え尽きる。以降は縮退星(白色矮星、中性子星、ブ ラックホール)の時代。
10の20乗年 星は銀河から飛び出るか、中心ブラックホールに落ち込む。
10の37乗年 陽子、中性子が崩壊して光になる?。これ以降、人間、地球、中性 子星などといったものは存在し得ない。以降はブラックホールの時代。
10の65乗年 星質量のブラックホールが蒸発。
10の99乗年 銀河中心の巨大ブラックホールが蒸発。以降は電子、陽電子、ニュートリノ、光の時代。
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