宇宙の科学2  4回目  2002.5.10.

1.ケプラーの第3法則。「T^2/a^3=一定」(T2乗割るa3乗は一定)
いろいろな惑星について、T^2/a^3を計算した。
太陽に近かろうが遠かろうが、円であろうがひしゃげた楕円であろうが、T^2/a^3は1になっている。

天体 平均周期 軌道長半径 離心率 T^2/a^3
T[年] a[天文単位] e
水星 0.2409 0.3871 0.2056 1.0005
金星 0.6152 0.7233 0.0068 1.0002
地球 1 1 0.0167 1
火星 1.8809 1.5237 0.0934 1.0001
木星 11.862 5.2026 0.0485 0.9992
土星 29.458 9.5549 0.0555 0.9948
天王星 84.022 19.2184 0.0463 0.9946
海王星 164.774 30.1104 0.0090 0.9946
冥王星 247.796 39.5403 0.2490 0.9933
ハレー彗星 76.4 17.99 0.967 1.0025
テンペル彗星 33.0 10.289 0.905 0.9998
1999CF199 1232 114.95 0.68608 0.9993

2.火星への行き方 --ホーマン軌道--
NASAは20年以内に火星に人を送り込む計画を進めている。
火星に行くには、ホーマン軌道と呼ばれる軌道が一番燃料が少なくて済む。

地球の進行方向に、ちょっとスピードを付けて発射する。
軌道の反対側で一番太陽から離れる。
そのままほおっておくとまた戻って来る。
もうちょっとスピードを上げ、遠日点でちょうど火星とランデブーできるよう な軌道がホーマン軌道である。
ホーマン軌道にするには地球軌道上で3.5km/sだけ 加速すればよい。これは地球が30km/sで公転しているのを考えると微々たる量である。

ホーマン軌道をたどって火星に行くには、何日かかるか求めよう。
難しいと思うかも知れないが、ケプラーの第3法則を使えばあっと言う間にできる。
ホーマン軌道は、惑星の軌道と同じくやはり太陽を焦点とする楕円軌道。
ホーマン軌道の長半径は、
(地球の軌道の半径+火星の軌道の半径)/2 = (1+1.52)/2 = 1.26天文単位。
T2/a3 = 1 に代入して解いて、T = 1.4年。
行くのはこの半分だから0.7年=255日。
255日=8.5ヵ月もかかるのである。

では、火星往復旅行には何年かかるか?
行くには255日。帰りも同じく255日。
では最短で合計510日でいいかというと、そうは行かない。 いつでも出発できるわけではないのだ。 火星を出発して255日後に、ちょうど地球が出発時の火星と反対側にいなければい けない。でないと地球軌道まで来ても地球がいず、着陸できない。
着陸し損なうとそのままホーマン軌道をたどり、火星に逆戻りである。 で、さらにおそろしいことにホーマン軌道の周期1.4年は、 火星の周期1.88年と異なる。ホーマン軌道をたどって火星軌道まで帰って来ても そこに火星はいないのである。こうして、宇宙船はタイミング良く地球か火星に 巡り合うまで、永遠に太陽の周りを周り続けることになる。

帰地球のタイミングを測るため、火星探検隊は、火星で460日滞在しなければ ならない。
火星旅行の概略はこのようになるだろう。

1。地球が火星の45度後ろにいる時に出発。(角度は、太陽-火星と太陽-地球の線のなす角)
2。255日で火星に到着。(到着時には、地球は火星の72度前にいる。地球の方が動きが速いので。)
3。460日、火星に滞在。
4。地球が火星の72度後ろに来た時に出発。
5。255日で地球に到着。(到着時には、地球は火星の45度前にいる)

合計970日。2年8ヵ月の長旅である。

実際の飛行計画では、旅行にかかる時間をできるだけ短くしようとしている。
火星の軌道は、ケプラーがケプラーの法則を導入せざるを得なかった ように、実は結構つぶれた楕円である。火星が近日点にいるころ火星に到着す るようにすれば、上記より飛行期間を短縮できる。
また、多少、燃料を多く使っても飛行期間を短縮できるなら、それを用いる可能性が ある。
帰りは燃料を多く使ってホーマン軌道以外の軌道をとるなら、460日も待たなくて良い可能性がある。

ちなみに1の火星探検隊を送り出す出発のタイミングは、2年2ヵ月ごとにやって来る。

ソ連の宇宙飛行士は1000日以上宇宙に滞在して生還している。
1000日というのは切りがいいと言うのもあるだろうが、科学的には火星旅行の目安である。
もっとも普通の人にとっては、宇宙船内のような、通常と違う、ストレスの続 く生活は1年が限度だろうという説もある。
僕の場合、ジャンボ機なら10時間で嫌になる。少々無理をして強行する海外旅行なら 1週間が限度である。海外生活なら1年が山であった。 与えられるストレスと耐えられる時間はこのように関係している。

ただ人による違いも大きい。 アポロ宇宙飛行士ならジャンボ機より狭い所に1週間いた。外は死の世界であるのに。
大航海時代の船乗りは、揺れる船の中に何ヵ月といた。 ジプシーや遊牧民などは旅を一生のすみかしている。
宇宙飛行士には、頭が良くて健康というだけでなく、このような資質も必要 とされる。

3.「無重力」
人間は重力そのものは感じない。
人間が「重力」だと感じているのは、地面からの反発力であろう。
座っている時なら、いすからの反発力。胃袋なら腸からの反発力。
これらの反発力が人の重力と釣合って、人はじっとしていられる。
だから地上で普通に暮らす以上、地面からの反発力を「重力」だと思っても
差し支えは無い。
ここで地面を取り去ると、人はもはや「重力」(実は地面からの反発力)を感じない。
よって「無重力」だと思う。
これが遊園地のフリーフォールに乗った時の感じである。
でも、重力は働いている。だからどんどんスピードを増して落ちるのである。