宇宙の科学2 5回目 2002.5.17.
1.太陽系のでき方
京都モデル(プリント)
原始太陽系(想像図)
惑星形成期の衝突の証拠
- 天王星は「転」王星。(横倒しになって自転している)
- 金星は逆向きに自転している。
- 土星の衛星ミマスの大クレータ。
2.月のでき方
月の起源説
遠ざかる月、遅くなる地球の自転
衝突放出説(Giant Impact)
(プリント)
原始地球に火星サイズの原始惑星がオフセット衝突。
まき散らされた岩石が集まって、ロッシュの限界のすぐ外側に
月ができた。
衝突後2週間で月はできる。
月が今の1/10の距離にあった頃は、潮汐力は今の 10^3 (千倍) であった。
(次の潮汐力の項に書いたように潮汐力は距離の3乗分の1で効く。)
つまり現在1m程度の潮の満ち引きの高度差は、1000mであった。
富士山の高さの1/4ほどである。
1日に2回(当時の1日は10時間程度であったから、5時間毎に) 潮が、
富士山の1/4までかけあがってくる。地球全体で毎日大洪水である。
3.潮汐力
(プリント)
大天体の隣に2物体があるとする(左図のAとB)。
2物体は引力でくっついて1天体になろうとする。
ところが、大天体の重力は、近い方の天体Aへの方が天体Bへのより大きいので、
2天体を引き離そうとする。
これは大天体による重力の差に他ならないのだが、2天体が引き離されるような
力が働く。この見かけの力を潮汐力と言う。
2天体の距離の差が同じ1kmのときでも、
大天体の中心からの距離が、1000kmと1万kmでは
1000kmの時
力の差= GMm/(1000000)^2 - GMm/(1001000)^2 = 1.997×10^-15 × GMm
1万kmの時
力の差= GMm/(10000000)^2 - GMm/(10001000)^2 = 1.9997×10^-18 × GMm
と、3桁も力に差がある。(大天体からの距離rの3乗で効く)
このように2天体が大天体の近くにあればあるほど、2天体を引き離そうとする
力が大きくなり、ある程度より近くでは、2天体は自分達の重力では合体でき
なくなる。これをロッシュの限界という。
この限界線は大天体の半径の2.46倍程度である。
ただし、例えば石自身は、原子の結合で固まりとなっているので、
ロッシュの限界は適用できない。
宇宙船や人間もそうである。原子の結合は同じ距離の重力よりずっと強い。
宇宙船が地球の近くを飛んだからといって、バラバラになることはない。
浜辺の砂や転がっている石など、重力のみで地面に引き付けられているものが、
ロッシュの限界の対象となる。もし月が地球のそんなに近くにあったら、
月の表面の砂は巻き上げられる。月の裏側の砂も遠くに飛んで行き、
宇宙空間に飛散する。地球に立派な輪ができることだろう。
ただ、大天体が、超重くて小さい場合、例えばブラックホールのような場合、
近くに近寄りすぎると潮汐力は、原子の結合力より大きくなることもある。
その場合、宇宙船や人は、上下に引っ張られ、引きちぎられる。
ブラックホールの事象の地平に入ってしまうとどうしようもないが、
そうでなくても、近付くと潮汐力でやられるので、あまり近寄らない方がいい。
(例1) 地球表面 (M = 6.0 × 10^24 kg, r = 6400 × 10^3 m)の人間。
1m離れて10kgの物体が上下にある場合(頭と足としよう)。
10kgの2物体の間に働く潮汐力ΔFは
ΔF = 2GMm/r^3 × Δr
= 2 × 6.67 × 10^-11 × 6.0 × 10^24 × 10 × 1m / (6400×10^3)^3
= 3.0 × 10^-5 N
= 3.0 × 10^-6 kg重
= 3.0 mg重
頭と足が 3 ミリグラム で引かれても痛くもかゆくもない。
(例2) 中性子星表面に人が立っている場合はどうか?
(M = 1.4 × 2.0 × 10^30 kg, r = 10 × 10^3 m)
ΔF = 2GMm/r^3 × Δr
= 2 × 6.67 × 10^-11 × 1.4 × 2.0 × 10^30 × 10 × 1m / (10×10^3)^3
= 3.6 × 10^9 N
= 3.6 × 10^8 kg重
= 3.6 × 10^5 トン
36万トンの力で引かれたら、、、考えたくない。
(例3) 中性子星から1000km離れたところにいるとどうか?
(M = 1.4 × 2.0 × 10^30 kg, r = 1000 × 10^3 m)
ΔF = 2GMm/r^3 × Δr
= 2 × 6.67 × 10^-11 × 1.4 × 2.0 × 10^30 × 10 × 1m / (1000×10^3)^3
= 3.6 × 10^3 N
= 3.6 × 10^2 kg重
= 360 kg重
これでもちょっと厳しいか。
木星のガリレオ衛星で一番内側にあるイオでは、火山活動が観測されている。
月程度の小さな衛星では内部は冷え切っていると思われていて、イオの
内部がまだ熱いことは不思議である。
イオは木星からの強大な潮汐力を受け、岩石が「潮の満ち引き」を起こし
その摩擦熱で内部が温まっていると理解されている。