宇宙の科学2  6回目  2002.5.24.

1.恒星の一生

1。星は 暗黒星雲の中で生まれる。

ガスの濃いところが自分の重力で収縮する。
ガスが重力で中心に落下。摩擦熱で熱くなる。
重力エネルギーで光る星=原始星 1千万年くらい続く。

2。大質量星の場合、途中、 ハービックハロー天体 (ジェットを噴出している原始星)のような状態を経験する。

3。中心の温度が1千万度になると水素の核融合が始まる。
星は安定して輝くようになる。
HR図で主系列の星はこうして水素の核融合で輝いている星である。
重い星は短命、軽い星は長生き。星は、太く短く、細く長く生きる。
核融合反応が温度に非常に敏感なため。

太陽は100億年生きる。
太陽の10倍の星では1億年生きる。
太陽の1/10の星では10兆年生きる。

4。太陽はすべての燃料を使うと1000億年輝く計算になる。
しかし太陽は1/10使用した時点で一生を終わる。それはこういう事情である。
中心に水素の「燃えカス」であるヘリウムが1/10ほどたまると
水素とヘリウムとの境界で燃えている水素の核反応が不安定になり、星の外層がどんどん膨張してしまう。
その結果、星は大きく広がり(地球軌道くらいまで膨らむ)、表面温度は下がり、「赤色巨星」となる。
さらに外層は流出が続き、ついには、中心にヘリウムの芯、外側に広がったガス (惑星状星雲
という状態になる。外層のまだ燃えていない層は宇宙空間に広がってしまい、 これでこの恒星は終わりである。
あとには白色矮星と惑星状星雲が残る。
白色矮星は、100億年もすると冷えて黒色矮星になる。
惑星状星雲は、10万年で飛散してしまい、姿を消す。
これが太陽の質量の3倍以下の星の一生である。

5。質量が太陽の3倍から8倍の星では、
赤色巨星となるまでは同じであるが、重いため中心の温度が上がり、ヘリウムにも火かつき
炭素や酸素に変わる。そしてさらに炭素も核融合を始める。ところが炭素の核融合は
激しいので星は爆発してしまう。これがI型超新星である。(I型超新星にはもう
1種類、連星系の白色矮星に隣の星から物質が降りつもり爆発するタイプもある。)
歴史的には突如星が現れるので新星と呼ばれた。そのうち特に明るいのが超新星である。
しかし実際は恒星の最後の大爆発であった。
そしてこの場合には、星は木っ端微塵に吹き飛びあとには星は何も残らない。
吹き飛んだ星の物質が、超新星残骸として残る。それも10万年程度の寿命である。

6。質量が8倍から30倍の星では、
赤色巨星となるところまでは同じだが、重力が強いため炭素や酸素も安定して燃える。
そして最終的に鉄が生成される。鉄はそれ以上核融合できない。
しかし重力により鉄の芯は収縮し温度が上がる。
すると50億度になった時点で鉄は熱を吸収し水素に分解してしまう。これまで水素から鉄に至るまで
核融合で出してきた熱を一気に吸収する訳である。すると星は、支えを失い、中心に向かって落下していく。
あるところまで圧縮されると芯は中性子星というものになる。中性子星はとても硬いのでそれ以上は
圧縮されない。それにもかかわらず物質は落ちてくる。物質は中性子星にあたり、跳ね返る。
そうして吹き飛ぶ。それがII型超新星である。吹き飛ばされた物質は超新星残骸となる。
爆発のメカニズムにはもう1説あって、鉄が分解するときに大量のニュートリノを出す。
それが星の外層に吸収されて、そのエネルギーで爆発するというものである。
どちらが本当かはまだ決着がついていない。
とにかく、中心に中性子星、周りに超新星残骸が残る

7。質量が30倍以上の星では、
赤色巨星になり、鉄の分解で星が崩壊するところまでは同じである。
しかし中心にできる中性子星はこの星を支えることはできず、つぶされてブラックホールに
なってしまう。外層は、吹き飛んで超新星残骸になると考えられている。しかしひょっとして
すべてブラックホールに落ち込んでしまい、超新星爆発はしないのかもしれない。

とにかく、中心にブラックホール、周りに超新星残骸が残るとしておこう。


こうして、原始星、恒星、赤色巨星、白色矮星、中性子星、ブラックホールが登場した。
これらの星々は、次のようにとららえることができる。

星の一生は重力との闘いである。


2.重力カタストロフィー(重力崩壊)

F=GMm/r2 の式を見ればわかるように、rが小さければFは非常に大きくなる。

2物体があるとしよう。
1.2物体に重力が働く。
2.2物体は近づく。
3.すると2物体に働く重力はもっと大きくなる。
4.するとますます2物体は近づく。3に戻る。
こうして2物体は際限なく近づく。

こういった結果が原因を助長する仕組みのことを
ポジティブフィードバック(正のフィードバック)という。

1.勉強がわからない
2.やる気がなくなる。
3.ますます勉強がわからなくなる。
4.ますますやる気がなくなる。3に戻る。

といった例のようにポジティブフィードバックはありふれている。
その結果、超できるやつと全くできないやつに2分化する。

宇宙でも、冷たく広がったガスと、熱く小さく固まった星とに2分化する。

星の一生はこの重力との闘いである。
いろいろな力を使って、星は重力崩壊から免れようとする。

天体 支える力
惑星   電子の反発力(クーロン力)
星間ガス ガスの圧力(温度)
(温度が低いと力は小さい。)
原始星  ガスの圧力(温度)
(ガス雲が縮んでいくことで重力エネルギーを熱エネルギーに変えて温度を維持している。)
恒星   ガスの圧力(温度)
(水素の核融合で熱を発生させ高温を維持している。)
白色矮星 電子の縮退圧(しゅくたいあつ)
(縮退圧:電子同士には言わば「なわばり」があって、2個を近づけようとする と、ある距離以下で巨大な力が働く。アイデンティティの発現とでも言おうか。 クーロン力よりも大きい。温度に依らない。)
中性子星 中性子の縮退圧
(しかし更に圧力を上げると、さすがの電子の縮退 圧でも支え切れなくなる。電子は逃げを決め込み、陽子と合体して中性子になっ てしまう。中性子も電子と同じくフェルミオンといわれる粒子なので縮退圧が 働く。その力は質量が大きいぶん 電子のより大きく、より重い力に耐えられる。)
ブラックホール なし
(しかし質量がそれより大きい場合、最終的には重力が勝ち、星は1点まで収縮し、ブラックホールに なってしまう。