宇宙の科学2 11回目 2002.6.28.
1.ハッブルの法則の意味
<オルバースのパラドックス>
(仮定) 恒星は均等に無限遠まで分布している
(結論) 夜空は明るい。
どっちの方向を見ても必ずどこかの星の表面にぶちあたるはず。
ということは、どこを見ても恒星の表面であるわけで、夜空は太陽と同じよう
に明るいはずである。
でも実際は夜空は暗いので、仮定のどこかが間違っている。
「均等に」
星は銀河のなかにあり、銀河の外にはない。決して均等ではない。
銀河も銀河団をなし、銀河のないボイドというところもある。
銀河団も均等には分布せず、グレートウオールのような大規模構造を作っている。
ここまでで宇宙の地平までの1%程度まで見ている。
しかし、
もっと大きなスケールで見ると一様に違いないとみんな思っている。
現在、SDSSが観測中。
「無限遠まで」
ハッブルの法則を信じるとこれ以上は見えない距離、宇宙の地平がある。
「無限遠まで見えるわけではない」が答えである。
<ハッブルの法則の意味>
ハッブルの法則がどこまでも正しいとすると、、、
○宇宙の果て
どんどん遠くに行くとどんどん銀河の速さが速くなる。あるところまで行
くと光速を超えてしまう。光速を超えたところからは永遠に光は届かない。
ここまでしか見えないので、そこを宇宙の地平と呼ぶ。それは、30万km/s
÷ 72km/s ×326万光年 = 135億光年である。
地平線の向こうにある銀河は我々から光速を超えるスピードで遠ざかっている
ことになるが、いいのでしょうか? いいのです。 遠ざかっているのは
「銀河を中に含む空間」であって、銀河自身ではない。
銀河はその空間の中で静止している
(重力に身を任せて運動している。自由落下している)。
空間同士のスピードは光速を超えてもいいのである。
他にも空間の移動速度が光速を超えている所がある。
ブラックホールの因果の地平の内側である。自由落下で落ちて行った宇宙船は
超光速で落ちている。これも落ちているのは「宇宙船を含む空間」であって、
宇宙船はあくまで自由落下すなわちその空間に静止している。
だからいいのである。 ただしその宇宙船から出た光は永遠に我々には届かない。
落下する空間の速度が光速になるところが事象の地平である。
重力に身をまかせて自由落下している時、その宇宙船は空間に静止している、
と見なす。逆に我々が地面に立っている場合は、
止まっているように見えるが、実は自由落下している空間に対して
地面から押されて上向きに運動している。
決して静止している訳ではない。
上向きに加速している系なので時計の進み方も宇宙空間よりゆっくりである。(一般相対性理論)
○ビッグバン
みんな遠ざかっているということは、昔はみんなもっと近かったと言うこと
である。 今326万光年のところにある銀河は、326万光年÷72km/s = 150億年前には
「ここ」 にあった。今326万光年の2倍のところにある銀河は、距離は2倍だが
遠ざかる速さも2倍なので、結局、同じく150億年前には「ここ」にあった。
つまり150億年前にはすべての銀河が「ここ」にあったということである。
「ここ」はどこであろうか? 地球を中心に爆発したのであろうか?
いや。我々は、宇宙原理といって、宇宙はどこでも同じように見えるということを仮定する。
我々から見れは我々中心に遠ざかっているように見えるが、
アンドロメダ銀河から見ればアンドロメダ銀河を中心にすべての銀河が
遠ざかっているように見えるだろうと考える。
宇宙の地平にある銀河から見れば、我々が反対向きに光速で遠ざかっているのである。
さらに向こう側にも銀河が綿々と連なっていて光速で遠ざかっているものまである。
その銀河は我々から見ると光速の2倍で遠ざかっているわけである。
もちろんその銀河は我々からは見えないが。
銀河が何かの爆発で吹き飛んでいると考えるには、
遠くに行くほど運動エネルギーが大きくなるし、
もともと超光速なんて作れない。
そこで重力のもとでの「空間」の考え方を取り入れ、
銀河は空間に静止していて、空間が遠ざかっていると考える。これなら超光速運動も可能である。
風船の上に書かれたたくさんの印が銀河とすると、
風船が膨らむと互いに距離に比例して遠ざかるであろう。
ぶどうパンの中のぶどうを銀河にたとえる人もいる。
パンを焼いてパンが膨らむと、ぶどうとぶどうの距離は距離に比例して広がっていく。
それらには膨張の中心はない。しいていえばどの点も中心である。
というわけで、宇宙膨張の場合も中心は、すべての場所であり、
どこでもいいのである。地球でもアンドロメダ銀河でも、超遠方の銀河でも。
全ての地点は対等で、全ての地点が「ここ」にあった。ハッブルの法則は、
地球から見ても超遠方の銀河から見ても同じように成り立っている。
銀河を中に含んでいる空間は全て150億年前に一点から広がった。
この大爆発をビッグバンと呼んでいる。
(注意) 遠くつまり昔は、ハッブル定数は今とは違っていた(多分大きかった)ので、
上の計算は厳密には正しくない。 (だいたいは正しい。)
2.ビッグバン宇宙
・原初、宇宙は巨大な火の玉のようなものだった。
・火の玉は爆発し、水素とヘリウムが作られた。
・水素とヘリウムのガス雲は重力で縮まり星となり、その中でさらに重い元素ができ、
・それらの元素から、人間を含むさまざまな物質が作られ、
・ついに今みるこの「世界」が出現した。
・これがビッグバン理論の宇宙モデルだ。「かの始めの時」の大爆発から今に
至るまで、宇宙は爆発による膨張を続けている。
・それは銀河のスペクトルの赤方偏移から知ることができる。
それは銀河が遠ざかっていることから生じるドップラー効果だ。
ビッグバン宇宙論を支える3証拠は、
1。ハッブルの法則
2。3Kマイクロ波背景放射
3。25%のヘリウム
である。
マイクロ波背景放射
銀河の進化
宇宙の大規模構造
3.ビッグバン理論の問題点
<地平線問題>
マイクロ波の宇宙背景放射は、どの方向からも2.73Kで一様にやってくる。
しかし考えてみればこれは不思議である。
ある方向から来た電波は、140億年旅して今やっと地球に達した。
それと180度離れた方向から来た電波もやはり、今やっと地球に達した。
この2つの電波は今初めてここで出会ったのに、なぜ同じ温度なのであろうか。
同じ温度というのは、お互いに作用しあって同じ温度になるのである。
無関係に偶然この精度で同じ温度になるというのは考えにくい。
インフレーション理論によれば、この2点はインフレ−ション前には
とても近くにあり相互作用しあって等温になっていた。
それがインフレ−ションの急激な膨張で引き離され、今やっと再び巡り合えた
のである。だから等温なのだ。
<平坦性問題>
この宇宙はビッグバンから150億年もたっているが、今だにほぼ臨界密度で膨張
している。 ビッグバンの初期にもし10の60乗分の1 (10^-60)でも臨界密度からずれていれば、
とっくの昔に宇宙は収縮してしまっているか、
膨張してスカスカになって銀河など生成しなかったかである。
よってビッグバンの初期には、ほとんど臨界密度であったということが言える。
インフレーション理論によれば、これは偶然ではない。
急激な膨張により多少ずれていた密度も、臨界密度に限りなく近くなったと説明される。
<反物質問題>
身の回りにあるものは全て正物質である。
ところが 高エネルギーの光から陽子などの物質が生成される時には、
通常の陽子のよう な正物質と、反陽子のような反物質が対(つい)になって生まれる。
ビッグバン初期においてもそうやって正物質が出来たのであれば、
半分の反物質 はどこに行ったのであろうか?
反物質の星や銀河も光では同じように見えるので区別がつかないが、
もし正物質と出会うと双方消滅し激しい爆発を起こすはずである。
でも、 宇宙を見渡してもどこにもそのような場所は無い。
ここで(物理学の力の未完成の)大統一理論によれば、X粒子なるものが存在し、
X粒子と反X粒子は等量生じたけれども、崩壊後は粒子の方がちょっとだけ反粒
子よりも多かったとされる。その差は100万個に1個程度の割合である。
宇宙が出来て10^-32秒の頃の話である。もちろんこんな粒子を地上の加速器で
作り出すことは未来永劫できない。
大統一理論は反物質問題は解決するが、モノポール問題というのを引き起こす。
<モノポール問題>
モノポールは磁石のN極のみあるいはS極のみの粒子で、未だ発見されていない。
大統一理論によると真空の相転移の際、大量のモノポールが発生する。
その数は非常に大量で、モノポールだけですぐに宇宙は収縮してしまうほどで
ある。
インフレーションがあったとしたら、 大量のモノポールが生じても
宇宙が急激に膨張したためにその密度が十分薄まってしまう。
宇宙が収縮しなくても、またこの宇宙にモノポールが検出されなくて
もいいことになる。
4.インフレーション理論
このようにインフレ−ションはビッグバン理論の問題点を解決する。
では、インフレーション理論の急激な膨張はどのようにおこったのであろうか?
それは反重力とでも呼ぶべきものである。重力のみが空間を加速したり減速し
たりできる。「反発する重力」を導入すると
互いに離れる方向に光速を超えるような加速も可能である。
その場合でも、銀河はあくまでその空間に「静止」しているのである。
インフレ−ションのエネルギー源は、真空のエネルギーだと言われている。
真空は何もない状態ではなく、常に粒子−反粒子対(つい)が生成しては消滅す
る状態である。つまりある程度のエネルギ−を持っている。
このエネルギ−状態があるとき変化すれば、
その変化分はエネルギ−となって現れる。そのエネルギ−が反重力を生み出したらしい。