ガンマ線バーストは赤方偏移1以上の遠方銀河で発生する、大質量星の一生の最期の極超新星爆発である。そのX線ガンマ線でのピーク時の明るさは、その銀河全体の明るさの1億倍にも達する。まさに、宇宙で最大の爆発である。
MAXIは視野内で捉えたガンマ線バーストを、地上新星検出システムにより自動検出し、その発生位置を世界に通報する。
瞬間視野は全天の2%。視野内でガンマ線バーストの発生する確率は、年間3.5個である。バースト後のX線放射(afterglow)を捕らえる確率は、年間2.5個である。
理研は、理研で開発された検出器を載せたガンマ線バースト衛星HETE-2の研究を引き継ぎ、MAXIでもガンマ線バーストの研究を推進する。
突如X線で輝き始める「X線新星」と呼ばれる天体現象がある。
何もない天域でX線で輝き始め、1日程度で増光し、全天で一番明るいX線天体となる。その後、100日程度かけて指数関数的に減光していく。今のところ、同じ天体が再び明るくなる現象は観測されていない。その第1号は1980年代に発見されたA0620-00という天体である。以来、今までに29個が発見されていて、平均すれば年間1個程度となる。
その正体は、太陽の10倍程度の質量のブラックホールと太陽より小さ目の恒星の連星系である。発見された(恒星質量)ブラックホールのなんと9割が、X線新星として発見されたものである。
恒星から少しづつガスが落ちてきて、ブラックホールの周りに降着円盤というガス円盤を形成する。通常はガス円盤は安定で回り続けているが、円盤のガス量がある値を超えると降着円盤の不安定性により、たまったガスが一挙にブラックホールに落下する。落ちていったガスはブラックホールの強大な重力で加熱され、吸い込まれる直前には1億度にも達し、X線を主に放出するようになる。それがX線新星として観測される。
MAXIでは、その感度が10倍に上がるので、半径にして3倍のところまで、銀河系の円盤部の体積にして10倍の体積をカバーすることになる。そこに存在するX線新星の数も10倍あると期待される。つまり、今までは暗くて検出されていなかったX線新星もMAXIでは見逃すことなく検出でき、その発見数も今までの10倍、すなわち1ヶ月に約1個の割合になる。
X線新星ほど極端ではないが、X線天体は、通常期に比べ10倍から100倍に明るくなり、1ヶ月程度で元の明るさに戻る「フレア」という現象がある。原因は各種ある。
連星系の中性子星が相手の恒星の近日点を通過した時に、恒星から大量のガスを吸い込み、光り輝くもの。連星周期が長いものでは、何年も見張っていないと発見できない。
SGR(軟ガンマ線リピーター)や、AXP(特異X線パルサー)という種類の天体は、磁場の極端に強い中性子星である。おそらく生まれたてで若いのであろう。これらの星は、なんとその磁場のエネルギーでガンマ線爆発を起こす。その爆発はいつおきるか分からない。2004年12月のSGR1806-20の巨大フレアでは、0.3秒間続いたピーク時には、定常X線源で一番明るい「さそり座X-1」の1000万倍もの強度のX線が地球に到来した。
それ以来、SGR/AXPの研究は盛んであり、今年になって、2つのSGRが発見されている。
太陽より小さな恒星では、強大な磁場=黒点を持ち、「太陽面爆発」をひんぱんに起こすものもある。それに伴い、大量のX線が放出される。
AGN(活動銀河中心核=巨大ブラックホール)に突然、大量のガスが落下し、X線を放つ。銀河の中心の明るい点源として観測されることもあれば(セイファート銀河、電波銀河)、銀河全体よりも明るく輝き、中心核しか見えないこともある(クエーサー)。
その変動も、連星の軌道周期に同期したもの、まったく周期性を持たないもの、あるいは、だいたいの周期を持つが周期が一定ではないもの、といった種類がある。
MAXIは全天の明るい方から100個程度の天体の、連続観測をすることができる。その変動の時間スケールは、ブラックホール連星であれば、ブラックホールの質量に比例していたり(質量により0.1秒から1年)、高速回転中性子星であれば、中性子星の自転スピード(毎秒1000回転!)に関係していたりする。時間変動はX線放射天体の正体を知るための重要な情報なのである。
特に長いほうは観測例が少なく、1週間以上にわたって連続観測した例は、銀河系内天体、活動銀河核とも数例しかない。MAXIはその「未知の領域」の観測を行う。
太陽などの通常の恒星は可視光を主に放射し、それに比べるとX線や電波の放射は桁違いに弱い。
しかし活動銀河核やブラックホール連星などは、電波、赤外線、可視光、X線、ガンマ線、TeVガンマ線の各波長で同じくらい強く輝いている。このような天体の挙動を調べるには、可視光望遠鏡だけでは不十分であり、多くの波長の観測装置を総動員して同時に観測する必要がある。
ジェット放出を伴うブレーザー天体や系内ジェット天体についてでは、質量降着に感度があるX線、ジェットに感度がある電波と、得意領域を持ち寄って総合的に調べることで正体に迫れる。X線は高エネルギー放射として最も良く調べられている波長で、得られる情報も多い。可視光、電波は地上から観測可能であるが、X線は宇宙に出て観測しなければならない。X線のモニタ観測を行うMAXIは、世界のあらゆる波長の天文学者が待望している観測装置である。
X線天体のカタログは、X線天文学発祥初期1978年にアメリカのHEAO-1衛星による全天観測により1回作られ、少しエネルギーの低いところでは、1991年にドイツのROSAT衛星(ローサット=Roentgen satellite=レントゲン衛星、注:レントゲンはドイツ人)により1回作られたきりである。
1990年頃、日本のX線衛星「ぎんが」は、HEAOカタログの明るいセイファート銀河を観測したが、ほとんどのものはカタログ値より暗くなっていた。X線天体は変動するということを思い出してほしい。10年もたつと多くのX線天体のX線強度は弱くなり、代わりに新しいX線源が明るくなっているのである。
HEAOから30年、同じエネルギーに感度を持つMAXIは、21世紀の新しいX線天体カタログを作る。
さらにHEAOに比べると感度が10倍以上向上している。HEAOが1年かけて作ったカタログをMAXIは毎月作れるのである。月めくりカレンダーのX線の世界を楽しんでいただきたい。さらに、明るい天体については「日めくりX線の空」も作る予定である。
実は太陽系は、100万年ほど前の超新星の残骸と思われる球状のホットガスの中に浮かんでいる。
すでに温度は100万度ほどに下がっていて、その温度に特有の酸素やネオンの輝線放射が強く観測されている。X線ホットガスの観測は、1991年のROSAT衛星で行われたが、この時は、X線強度だけのマップであった。MAXIでは、酸素やネオンの輝線だけを取り出し、そのマップを作ることができる。地球を取り巻くジオコロナや太陽を取り巻く太陽風コロナの影響の無い、ピュアなX線ホットガスの分布を、初めて描き出すことがきる。